仙腸関節について

仙腸関節とは

仙腸関節というと、あまり聞き慣れない関節の名前かと思います。腰椎の下には仙骨というおしりの真ん中の骨があります。それと骨盤の両翼の骨である腸骨となす関節が仙腸関節です。多くの関節と異なり、その動きがごくわずかであることや、画像所見と臨床症状はリンクしないことから、痛みの原因部位として念頭におかれないこともしばしばあります。しかし、四足から二足歩行となり、上半身の重みを垂直に支えなくてはならなくなった腰から骨盤は、その形状を変えました。仙腸関節の形状も変化し、それは体重を支え、下肢にスムーズに伝達するショックアブソーバーのような機能をすると言われています。
骨盤骨前方視、骨盤骨後方視

仙腸関節の症状

仙腸関節そのものは臀部と腰の間の左右にありますので、「腰の少し下の右(左)」に疼痛が出ます。しかしそこだけでなく、股関節の外側、大腿の外側、後面、足関節の上」、または「下腹部から鼠径部」などさまざまな部位に現れる事があります。これが診断を難しくしている一因であり、腰椎疾患(ヘルニアなど)、股関節疾患との鑑別を要する理由です。ただし、9割以上の方は後上腸骨棘周辺(仙腸関節周辺)に痛みを自覚されているとされ、診断時の評価に必要な症状です。また腰椎疾患は神経支配領域に一致した下肢症状を呈しますが、仙腸関節障害では神経支配に一致しない領域のそれを認めるというのも仙腸関節の関連痛を疑う所見になります。

仙腸関節の治療

仙腸関節の治療は、基本的に保存治療です。リハビリテーション、仙腸関節ブロック注射、骨盤ベルトなどの単独または複数の組み合わせで行います。手術治療は大変特殊なので、通常は行いません。また疼痛改善や予防のための生活動作改善や体操も大切で、長時間同一姿勢での作業や長時間坐位、中腰姿勢などを避けること、体幹トレーニング、開脚上下運動(力士の蹲踞のような運動)も有効です。