こども特有の症状

こどもの骨折の特徴

診断面では、こどもはケガの状況を正確に伝えることができにくく、また成長線(骨端線といいます)や未成熟の軟骨が多いため診断が難しいことがあります。
治療面では治癒しようとする力が旺盛なため、おとなよりも早期に癒合します。また変形矯正力がおとなよりも強く、手術を必要としないことも多いです。一方でこども特有の骨折や成長に悪影響を及ぼす骨折もあり、注意が必要です。

肘内障について

多くは未就学児(とくに3歳前後)で、前腕の引っ張り力に回内(手のひらが下を向く動き)強制が加わることで橈骨頭という部分が輪状靭帯の下をくぐり抜けることにより発生するとされています。通常、整復操作ですぐに治りますが、年長児ではしばらく固定したほうがよい場合があります。また、まわりがケガの場面を直接見ていないことも多く、肘内障だと思ったら骨折だったということも時にあります。

こどもとスポーツ

幼少時から熱心にスポーツをしているお子さんも多いことと思います。こどもはおとなと異なり成長途中であり、骨は未成熟で、軟骨でできた骨端線という成長線を持ちます。ここは力学的に弱いため、ケガや激しい動作により損傷することがあります。また関節も柔らかいため繰り返しの動作で骨同士がぶつかり、軟骨の一部が剥がれる離断性骨軟骨炎という傷害を生じることもあります。こどもはスポーツを休みたくないがゆえ無理をしてケガや障害につながることがあり、オーバーワークになっていないかを周囲のおとなが注意してあげることも大切です。またスポーツ障害を発症したこどもでは、体が硬いなど障害部位以外に原因があることも多く見られます。ケガの予防のためのリハビリは大変有効であり、当院でも積極的におすすめしています。

こどもの股関節疾患

こどもには特有の股関節疾患があります。それはこども特有の血流や骨の成長、構造などに起因します。

先天性股関節脱臼、発育性股関節形成不全

生下時から、または後天的に股関節が脱臼するということがあります。過去には初歩が遅いことで発見されることもありましたが、現在は小児科の検診でチェックする体制が整い、多くが1歳未満に発見されるようになりました。また脱臼までおこしていなくても、股関節の発育が不全で、中高年になり変形性股関節症を発症する危険のあるお子さんもおられます。股関節の開きが悪い、跛行があるなどあれば検査する必要があります。

股関節炎

幼児から学童期にみられる一過性の股関節炎を単純性股関節炎といいます。原因はわかっておりませんが、予後良好で2週間程度で治癒します。しかし、とくに乳幼児では細菌感染による化膿性股関節炎が生じることがあり、これは早急な治療が必要です。二疾患は好発年齢が異なりますが、鑑別が必要です。

ペルテス病

幼児から学童期まで発症(とくに小学校低学年期)する大腿骨頭の壊死性疾患です。10万人に4-5人の発症率で男児に多く、初期にはレントゲンで診断がつかないこともありますので、疑う場合はMRI検査を行うことがあります。

大腿骨頭すべり症

大腿骨近位の骨端線損傷をとくに大腿骨頭すべり症といいます。前述のように骨端線は軟骨ですので、力学的に弱く、スポーツを多くするお子さん、体重が重めのお子さんなどは損傷の可能性が上がります。激烈な痛みでないことのほうが多く放置されることや、股関節ではなく膝の痛みだけのこともあり、見逃されることがあるので注意が必要です。