手の倫理

空気はさわれないがふれられる、逆鱗にふれるとは言うが、逆鱗にさわる、とは言わない、傷口にさわる、は痛そうですが、傷口にふれる、は優しそう、など、「さわる」と「ふれる」という、いずれも触覚を表す言葉のニュアンスの違いについての説明からはじまるこの本では、触覚という感覚の持つ特徴や性質、視覚や聴覚といった他の感覚との違い、そこからくる触覚によるコミュニケーションの特徴、そして手(触覚)の記憶などの話が展開されていきます。そして手から導かれる自らの内部世界を道徳と倫理という観点から考察しているとても興味深い本でした。

診察という行為はまさにこの触覚によるものですが、この本を読んで、意識的、無意識的に触診のやり方を変えていたという自覚や、不用意な触診にならないようにしなくてはという意識を確認する事ができました。

超知能AIの時代が来ると言われていますが、AIに触覚はありませんから、その点に人間の希望を見出したいと思います。

 

2026年04月30日